介護の生産性向上とは?生産性向上ガイドラインの7つの取り組みを徹底解説
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介護業界では、労働人口の減少や高齢者数の増加により、深刻な人材不足が問題となっています。
介護ニーズの急増と人手不足への対応策として、厚生労働省では介護分野の生産性向上に向けた取り組みを推進しています。しかし、生産性向上というものの、どこから手をつければよいかわからないといった事業所も少なくありません。
本記事では、介護現場における生産性向上とは何か、生産性を向上させる取り組みについて解説します。実際に生産性を向上させた取り組み事例も紹介しますので、ぜひ活用してください。
目次
介護現場における生産性向上とは?
介護現場における生産性向上とは、業務を効率化し、サービスの質を向上させることです。
そのためには、以下の2点に着目した実践が重要です。
- 3Mの見直し
- 介護サービスの質を高める
介護サービスにおける生産性向上への取り組みとして、現状の介護業務の流れを見つめなおすことが重要です。それでは、個別に見ていきましょう。
3Mの見直し
介護現場の生産性向上の取り組みには、3Mの見直しが効果的です。3Mとは、ムリ・ムダ・ムラの3つの頭文字を取ったもので、それぞれの語尾を取って「ダラリの法則」と呼ぶこともあります。
項目 |
定義 |
事例 |
ムリ |
能力以上の成果を求めて負荷がかかっている状態 |
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ムダ |
価値を生まないムダな作業や資源を浪費している状態 |
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ムラ |
仕事量や人、作業にばらつきがある状態 |
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これらの3Mを改善するためには、現場業務の客観的な整理が必要です。日常業務の中の3Mを見つけ、どのような業務に3Mが発生しているかをチェックしましょう。
(参照):介護サービス事業(施設サービス分)における 生産性向上に資するガイドライン
介護サービスの質を高める
介護現場で生産性向上に取り組む意義は、介護サービスの質を向上させることです。
厚生労働省は介護分野の生産性向上を、以下のように定義しています。
「人口減少の中、介護職は限られた人数で専門性の高い介護サービスを提供しなければなりません。職員が介護業務に集中でき、いきいきと働くことのできる環境を作るため、日ごろの業務改善(すなわち生産性向上)は重要です。」
介護需要の増加により、生産性向上の取り組みを進め、介護サービスの質を維持・向上させていくことが求められています。
生産性向上を進めるには、介護施設の業務改善が必要です。業務改善により有効時間の捻出が可能になり、職場環境が整います。職員のモチベーションやコミュニケーションが活性化し、質の高いサービスを提供できます。
介護業界の現状と課題
生産性向上に取り組む前に、現在の介護業界の現状と課題を把握しておきましょう。
介護業界の現状と課題は、以下のとおりです。
- 要介護者が増加傾向
- 深刻な人員不足
超高齢化社会で介護需要は高まる一方ですが、介護業界は多くの課題を抱えています。介護要員を増やすことは容易ではないため、生産性向上はこれからの介護現場に欠かせない取り組みであることを把握しておきましょう。
要介護者が増加傾向
少子高齢化が深刻化する日本社会では、要介護者の急速な増加が懸念されています。
厚生労働省によると、要介護(要支援)認定者数は2000年の約256万人から2022年には約682万人と、21年間で2.7倍に増加しました。令和6年1月現在では、要介護(要支援)認定者数が706.7万人で過去最高となっています。
(参照):厚生労働省 介護分野の最近の動向について
(参照):厚生労働省 介護保険事業状況報告(暫定)
また、超高齢化社会に突入する「2025年問題」は避けてはとおれない問題です。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、医療や福祉に深刻な問題が出ると予想されています。
介護人材不足や介護施設が不足することが予想されるため、質の良いケアを提供するためにもICTの活用や業務効率化の推進が必要です。
深刻な人員不足
要介護者の増加にともない、介護要員の人員不足が懸念されています。
厚生労働省の「第9期介護保険事業計画」に基づくと、今後確保が必要な介護職員は、2022年の215万人から2026年度は約240万人、2040年度は272万人と推計されています。
(参照):厚生労働省 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
介護業界の人材不足の背景には、介護サービスの利用者の増加、労働人口数の減少、労働環境の悪さや心身への負担などさまざまです。
しかし、介護業界の人手不足を解消するために政府はさまざまな取り組みを進めています。介護職員の処遇改善や、ICTの導入による業務改善、外国人労働者の雇用などが挙げられます。
介護現場の生産性を向上させる7つの取り組み
介護現場で生産性向上の取り組みを進めるために、何から手をつければよいかわからないといった方も多いでしょう。ここでは、介護現場の生産性を向上させる取り組みについて解説します。
- 職場環境の整備
- 業務の明確化と役割分担
- 手順書の作成
- 記録・報告様式の工夫
- 情報共有の工夫
- OJTの仕組みづくり
- 理念・行動指針の徹底
厚生労働省では、介護現場の生産性向上の取り組みとして、生産性向上ガイドラインを作成しています。取り組みを開始する前にガイドラインを活用し、「改善活動の準備」で生産性向上への理解を深めることから始めましょう。
(参照):介護分野における生産性向上の取組の進め方
職場環境の整備
生産性向上へ向けた取り組みの第一歩として、職場環境の整備が重要です。職場環境の整備には、5Sの視点が効果的です。
5Sとは元々、製造業での業務改善のための手法ですが、医療・介護現場でも多く用いられています。5Sは以下のとおりです。
- 整理:不要なものを処分する
- 整頓:必要なものを使い場所におき、いつでもすぐに取り出せるようにする
- 清掃:誰が掃除しても同じようにきれいな環境を維持する
- 清潔:整理・整頓・清掃が標準化され、清潔な状態を維持する
- 躾:4つのSを習慣づけ、清潔な状態が当たり前になっている状態
5S活動の目的は、安全・効率的・快適な職場づくりです。普段から整理整頓を意識し、5Sを実施することで、質の高いサービスを提供できます。また、職員の負担を軽減することで、人材の定着・確保にもつながります。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
業務の明確化と役割分担
生産性を向上させるには、適切な役割分担と業務の明確化が必要です。業務が明確化されておらず役割分担が適切でないと、職員の負担増や介護ケアの質の低下を招く恐れがあります。
役割分担を見直すには、1日の業務全体を、誰が、いつ、どの業務を、どの程度の時間をかけておこなっているのか調べることから始めましょう。普段おこなっている業務で曖昧になっているものを明確にすると、ムダな時間を減らせます。
業務時間を調査し、1日の業務の流れを「集約させる」「分散させる」「削る」といった3つの視点で見直します。その後、それぞれの業務ごとに範囲とポジションを決めて、役割と手順の明確化が必要です。
適切な役割分担と業務の明確化により3Mが削減され、生産性向上につながります。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
手順書の作成
手順書を作成することで、介護サービスの品質維持と作業時間の均一化が図れます。
手順書というと単なる業務マニュアルと同じと思うかもしれませんが、職員全員が適切な業務を迷わずおこなうために役立ちます。また、熟練した職員でなければできない業務を、誰でも同じレベルでできるためのトレーニングツールとして使用可能です。
介護現場で手順書を作成しないと、同じ業務でも人によってかかる時間が異なり、業務効率が低下する要因になります。安全性が低下する恐れもあるため、手順書を活用し、サービスの均一化を図りましょう。
手順書を作る際は、写真や絵、図を活用し、見やすいものにすることがポイントです。また、業務ができているかの目安となる判断基準を明確に記載するようにしましょう。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
記録・報告様式の工夫
記録・報告様式を工夫することで、記録業務の時間短縮や生産性向上が期待できます。
介護記録や報告書の作成など事務作業の負担が大きいと、介護ケアに充てる時間が少なくなり、介護サービスの質低下にもつながりかねません。
記録・報告様式を工夫する具体策として、記録ソフトの導入や勤怠管理システムの導入が挙げられます。タブレットやスマホで介護記録を電子化し、一元管理すれば、情報共有もできて転記作業を大幅に軽減できるでしょう。
紙媒体の場合でも、不要な項目や重複している項目がないか見直し、項目やレイアウトを変更するなど使いやすい様式に改善可能です。現在使用している帳票の見にくい点や煩雑になっている部分を話し合い、少しずつ効率化することから始めてみてください。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
情報共有の工夫
情報共有は業務効率化だけでなく、多職種との連携やトラブルを未然に防止することにも役立ちます。
情報共有の方法として、ICT機器の活用が有効です。情報共有にインカムを活用すれば、タイムリーに情報を共有できるため、迅速な対応が可能です。指示出しや申し送りの時間も短縮できるのは大きなメリットといえるでしょう。
また、パソコンやタブレット端末などのICT機器を活用する事業所も増えています。事務作業にかかる時間を軽減できるうえ、情報共有も可能です。タブレット端末やスマートフォンを用いて、訪問先でも入力できる介護ソフトもあります。
利用者とご家族をつなぐコミュニケーションツールとして利用できるソフトを使用すれば、オンライン上で必要なやり取りができるため、スムーズな情報共有が可能になります。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
シエノワなら介護施設のスムーズな情報共有と業務効率化が可能です。
OJTの仕組みづくり
OJTは、実務を体験しながら仕事を覚える育成法です。新人職員だけでなくベテラン職員のキャリア育成にも効果的な手法で、多くの事業所で活用されています。
OJTは、実践に役立つスキルを身につけられるため、職場での即戦力が期待できます。しかし、指導方法にばらつきがあると、教えてもらう側もかえって混乱してしまい、業務に支障をきたしてしまうことにもなりかねません。
そのため、教える内容や手順、評価の基準などをマニュアル化し、人材育成の仕組みや体制整備が重要です。OJTを成功させるには、計画的な取り組みとフィードバックをもらいながら、充実した研修内容にすることが必要です。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
理念・行動指針の徹底
理念や行動指針を全職員に徹底することで、統一した質の高いサービス提供が実現できます。介護現場では、業務の手順をマニュアル化しても、予測できない事態が起こりうる可能性があります。
そのようなときは、法人の理念・行動指針に立ち戻って考えることが必要です。普段から職員に組織の理念や行動指針を周知・徹底・理解できていれば、不測の事態にも焦ることなく、適切な判断や行動が可能です。
理念・行動指針の徹底は、自律した行動ができる人材育成にもつながります。理念や行動指針を周知させるには、毎日の朝礼で唱和する、理念や行動指針について定期的に職員と会話する、事業所に掲示するなどさまざまな方法があります。
事業所に合った方法で取り組んでみてください。
(参照):厚生労働省老健局|より良い職場・サービスのために今日からできること(業務改善の手引き)
介護現場の生産性を向上させた事例4つ
介護現場における生産性を向上させた事例を知りたい方も多いでしょう。ここでは、介護現場の生産性を向上させた事例を4つ紹介します。
介護現場における生産性を向上させた事例には、次のようなものがあります。
- 介護ICTの導入
- 介護機器の導入
- 介護の生産性向上セミナーや研修会への参加
- 介護生産性向上総合相談センターの活用
自身の事業所の課題に合ったものを導入・活用することで、大きな効果を生み出せます。
介護ICTの導入
介護現場の生産性向上に、ICTの導入は効果的です。介護施設におけるICT導入の効果は大きく、業務負担の軽減や業務効率化、情報共有の促進、離職防止など多くのメリットがあります。
具体的なICTの種類と導入効果は、以下のとおりです。
種類 |
導入効果 |
介護ソフト(記録・請求) |
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勤怠管理・給与計算 |
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見守りシステム |
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送迎システム |
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オンライン面会 |
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上記は一例ですが、ICTの導入・活用により、業務の効率化と介護職員の負担を軽減することが可能です。また、職員間の情報共有や連携をスムーズにし、質の高い介護サービスが提供できるようになるでしょう。
厚生労働省でも積極的にICT化の導入支援を推進しています。介護施設のICT導入に、シエノワをぜひご検討ください。
介護機器の導入
人手不足と職員の負担軽減に、介護ロボットや見守り機器などの介護機器を導入する事業所が増えてきました。
厚生労働省では、介護サービスの生産性向上に向けた取り組みとして、介護テクノロジーの利用を推進しています。
介護機器には、以下のような種類があります。
- 介護ロボット
- 見守りセンサー・インカム
- タブレット端末
- 通信環境機器
介護ロボットは、移乗介助や排泄介助などの介護ケアをアシストすることが可能です。また、利用者の見守りをおこなうセンサーやインカムも、介護現場に導入する事業所が増えています。
介護機器の導入メリットは、介護者の身体的・精神的負担を軽減できることです。介護ロボットやタブレット端末で業務改善をおこない、職場環境を改善しましょう。
(参照):厚生労働省 介護テクノロジーの利用促進
介護の生産性向上セミナーや研修会への参加
生産性向上の取り組みとして、生産性向上セミナーや研修会への参加も効果的です。
生産性向上の基本的な考え方や取り組み方法、事例、補助金の活用法などのセミナーを開催している自治体も多くあります。
セミナーに参加することで、それぞれの事業所でどのような業務改善をし、生産性を上げていくか具体的に考える機会を得られるでしょう。政府が取り組んでいる施策や取り組みをおこなっている具体的な事例を知ることもできます。
また、外部の専門家を招いて教育や研修会の開催も可能です。生産性向上を目的とした適切な研修プログラムを導入することで、職員のスキルアップや介護サービスの質の向上が期待できます。
介護生産性向上総合相談センターの活用
生産性向上における悩みや取り組み方を相談したい場合、介護生産性向上総合相談センターを活用するのもひとつの方法です。
介護生産性向上総合相談センターは、生産性向上の取り組みを推進するために、都道府県が主体となって窓口を設置しています。
なお、2024年度の介護報酬改定で、生産性向上推進体制加算が新設されました。介護職員の負担軽減を目的とした介護機器やICT機器の導入・活用が要件となっており、事業所の収入にも影響します。
生産性向上のための介護現場の業務改善や介護ロボット、ICT活用など、さまざまな相談に対応しているため、必要な方は相談してみるとよいでしょう。
「シエノワ」なら介護現場の生産性向上に役立つ
引用:シエノワ公式HP
2024年度の介護報酬改定で生産性向上推進体制加算が新設されました。生産性向上推進体制加算の取得に向けて、業務改善の取り組みを考えている事業所の方も多いでしょう。
介護現場の生産性向上には、障がい者施設支援システム「シエノワ」の利用をご検討ください。「シエノワ」のシステムを活用することで、介護施設における課題が改善し、介護職員の負担を大きく軽減できるでしょう。
「シエノワ」は介護記録の入力・情報共有だけでなく、介護職員と利用者・ご家族をつなぐコミュニケーションツールとしても利用できます。介護現場の業務を効率化できれば、サービスの質を大きく向上可能です。
介護事業所の生産性向上に役立つ「シエノワ」は、下記より資料のダウンロードが可能です。
まとめ
本記事では、介護事業所の生産性向上への取り組みについて紹介しました。
厚生労働省の生産性向上に取り組むためのガイドラインを活用することで、介護業界の生産性向上への理解を深められます。まず3Mの削減、職場環境の整備、職員間の役割分担や情報共有の工夫などから取り組みを始めてみてください。
介護現場の生産性向上への取り組みで悩みがある方は、シエノワにぜひご相談ください。シエノワのシステムを活用して、業務の効率化をおこない、生産性向上につなげていきましょう。
シエノワを詳しく知りたい方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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